詐欺師の恋

「大人しく社内に居ろよ、櫻田。都合の良い女でいてくれないと色々困るんだよねぇ。」



同時に、肩を掴まれた。



「っ、放してください」




「いいじゃん。俺等だってそーいう仲だったろ?都合良い関係だったじゃん。」




鳥肌が立った。



吐き気がした。





宏章のことにおいても、絡んでいたということか。


去年、宏章と私の間にあった出来事も、知っているのだろう。


二股かけられてるのに、知らないふりをした私は、確かに都合の良い人間だったと思う。




「ほんとに、、止めてください…私急ぐので…」



だけどいつだって、本気で愛されたいと願ってた。




「大丈夫だって。ちゃんと元に戻らせてやるから」





私の反応などお構いなしに、ぐいぐいと引っ張られて方向を転換させられた。




すごい嫌だ。



触られるの、すっごく嫌。



力では勝てないから、叫んでやろうかしら。




すっと深く息を吸い―





「飯山先輩」





聞こえた声は凛としたものだった。




勿論私のじゃ、ない。




「…藤代…」





緩んだ力で、身が軽くなった私が振り返ると、緩い癖っ毛、黒髪眼鏡の、藤代くんが、そこに居た。






「俺、櫻田と今日約束してるんですけど、何か用事ですか?」





約束なんてひとつもしてないけど、藤代くんは飄々と嘘を吐いた。