詐欺師の恋

中堀さんはこれから仕事かな。


メール、しようか。


それで、電話できる時間になったら電話してもらおうか。




なんか、疲れた。



声が、聞きたい。




そんな風に思う自分。結構心が擦り減っているんだなと自嘲し、一歩踏み出した時だった。





「櫻田」




自分を呼ぶ声に、私は反射的に顔を上げる。




「…今、帰りですか。」




気付けば、警戒心丸出しの声になっていた。





「まぁーね。」





会社前の植え込みで、一服していたらしい彼は、にやりと笑って私の前に立つ。



「お前さ、今中堀と付き合ってんの?」



「!?」




まさか彼の口から、中堀さんの名前が出てくるなんて思いもしなかった。




「何、言って…」




「折角さ、俺が佐久間にお前のこと紹介してやったのに、これじゃ俺の面目丸つぶれじゃん?」




しっかりと私を見る彼に、心臓が嫌な音を立てる。





「紹介って…どういうことですか…?」





「櫻田は、都合の良い、聞き分け上手な女だから、手元に置いとくといいよって言ったんだよ。……一人に絞らずとっかえひっかえやってたろうよ。今更好きとか嫌いとかないだろ。」





眩暈が起こりそうだった。