詐欺師の恋

フロアに着くと、憲子がちょっと、と言ってコピー室に手招きする。



この時間、更衣室も給湯室も人が使うから、配慮してくれたのだと思う。





「今回の噂が何かは、私が突き止めてあげる。だけど、どんなものにしたって、花音は今のまま、中堀さんと向き合って、実家の問題とかに集中しなさいよ。外野は気にすること無いわ。」






運よく誰も居なかったコピー室。



憲子は真剣な顔で、私の肩を掴んで言った。





「今までの噂は、あんたも自業自得な所があった。だけど今は違うってこと、私は知ってる。」




「憲子…」




「どこのどいつだかは知らないけど、胸張りなさい。いい?」




「うん…」





小さくありがとうと言うと、親友は目が赤いよと言って笑った。




私は。




いつだって、下を向いて生きてきた。



周りからの視線に気付かないフリをして、敵だと見なして、自分を精一杯強く見せようとしてきた。



自分の名前なんて、知られていなくても、平気だと思おうとしてきた。





だけど、貴方に逢った。





そうだ、貴方はあの時にも。




私の名前を呼んでくれたね。