詐欺師の恋


―あれ。




気のせいかな。



受付の子、私の声、聞こえなかったのかな。




今、無視された気がした。



それだけじゃない。



私のことしっかり、見てた。



睨んでた?




この会社で私が余り評判が良くないことは自覚している。



でも、受付の子は、中堀さんとの一件があってから、私を見る目つきが変わったようだった。



挨拶もしてくれていたのに。





「櫻田?」





隣で藤代くんが声を掛けてくれたお陰で、私ははっと我に返った。





「ご、ごめん。なんか、ぼーっとしちゃって…」





心がざわざわする。



落ち着かない。



何だろう。



何か良くないことが、起ころうとしているような。





「大丈夫か?咳出てるし、体調悪いんじゃ…」




「大丈夫!あ、エレベーター着てるよ。行こう。」




なんとか笑顔を取り繕ったけど。




エレベーターの中でも、チラチラと何人かに振り返られることがあって、胸騒ぎは増していくばかりだ。