詐欺師の恋

口が自然と緩む。



仕事、行きたくないなぁ。



あ、でも憲子が居るもんね。



憲子には話しておいた方が良いよね?



だって…だって、ねぇ?



思考回路がまたあらぬ方向へと向かおうとしたその時。




「下向いて歩いてると危ないぞ」





ちょうど、いつか中堀さんと出会い頭にぶつかった角に差し掛かった所で、後ろから声が掛かる。




「え―」




びっくりして立ち止まり、きょろきょろと見回すと、幾らか少ない歩行者の中から知った顔を見つけた。





「藤代くん…」





「年明け、めでとー」





少しもめでたそうな顔をしていない、眼鏡の藤代くんが私の隣を歩く。





「あ、明け、たね。。。」







さっさと歩いていくので、私も少し早歩きするけど、戸惑いを隠せない。






「あ、の。藤代くんって電車通勤だったっけ…?てっきり車かと―」




「友達と朝まで飲んでたから。」




そう言って、藤代くんは悪戯っぽく舌を出して見せた。