詐欺師の恋

「わかってるでしょ、おばあちゃんの命令は絶対よ。」




母のその言葉がやけに背中に重たく圧し掛かる。



姉もそれを聞くと、力が抜けたように溜め息を吐いて、再び椅子に座った。





確かにそうなのだ。



祖母が言うことはいつも現実のこととなる。




ということは、この紙袋の中身は全て祖母一押しの人間たちということだ。





祖母の容態がどうであれ、今度のことも本気なのだということが伺える。







「…まぁ、俺達も、お前等が身を固めてくれると嬉しいし、ばあちゃんが見たいというんだから、いいかなと思って。」





「多分、婚約ってだけで、納得してくれるんじゃないかとは思うんだけどね」






父と母がうん、と頷きあう。





「…そうかぁ…俺、本当はここのところニュースの特集でやってた『結婚できない子供達』を見て思い立ったんじゃないかと思ってたよ。」





「そんなふざけた理由だったら、ぶち切れてこの家ぶち壊してやるわよ」





兄のとぼけた言葉に、姉がギロリと睨んだその時。



父が背筋を固くしたのを私は見てしまった。




母はさすがのポーカーフェイスだが。




実際の所、真実は大したことではないようだ。


末っ子は賢いので、ただ黙って見逃すことにした。