詐欺師の恋

空気が凍りつくとは、このことだ。




私は、目が線になった母を見つめながら、声を上げることも、反応することもできなかった。




恐らく兄は、項垂れているのだろうが、それすら確認する余裕もない。







「は?」





一番最初に声を上げたのは、姉、だった。






「え?意味わかんないんだけど。何それ、何で急にそんなこと言われなきゃなんないの?」





怒りの籠もった声。当然だろう。





「急、じゃないわよー?それ、それぞれのお見合い写真だから、見て決めてね。」





母はそれをなんなくかわして、うふふと笑った。





「ちょっ…と待ってくれよ。自分で相手を見つけることもできないわけ?」





兄もやっと口を開く。





「そんなことないわよ。そういう相手がいるんなら連れてらっしゃい。但し―」





母は相変わらずにこにこしながら、人差し指をピンと立てた。






「半年以内、よ。それが無理ならお見合いしてもらうわ。」





その言葉に父も頷いた。




目の前に置かれた紙袋が、さっきより数倍重さを増したように見える。