詐欺師の恋

『だ、だって、メリッサとケイが何も言わずに突然ここに連れてきたから…』




私は口を軽く尖らせながら呟いた。




もしも、中堀さんが迎えに来てくれるのがわかっていたら、喜んで屋上で待っていたに違いない。




だって。



身体はすっかり冷え切っていたけれど、今は中堀さんの熱が伝わってくる。






『…うん。もう、大丈夫だから。帰ろう。』





中堀さんはそう言って、私からぱっと離れると、羽織っていたコートを脱いで私に掛けようとした。





『いや、大丈夫ですから!私、下にあるし…』



『いいから、黙って。』




慌てて断ろうとするけれど、結局ぶかぶかのコートにすっぽり包まれてしまった。



初めて逢った時も、中堀さんは黒のコートを着ていた。


あのコートを私が着たら、下に引き摺っちゃって大変だろうと思っていた。





『あの…』




『何?』







そして、それは現実となった。





『これ、これじゃ…その…』





あぁ、どうしよう。



見てわかるだろうに。




その不機嫌そうな眼差しに、言葉が出てこない。





『ぶっ…くくっ…』



『!?』





笑ってらっしゃる!?