詐欺師の恋

寒さに震えていると、何やら外が少し騒がしい。



どうも、客人が帰っているらしい。



何を言っているのかはさすがに聞こえない。





『また、浮かれすぎたのかなー』




中堀さん関係のことになると、どうも感情の箍(たが)が外れてしまう傾向にあることを、自覚している。




外気より更に冷たい手すりを両手で握ると、すっきりと晴れた空をまた見上げた。






『空、生…かぁ。』






ずっと中堀さんと呼んでいた人のことを、アオと呼ぶのは、少し恥ずかしい気もする。





心の中も、空生と呼ぶのに慣れなければならない。




あー、練習しなきゃ駄目だな。



なんだか、くすぐったい。





『あお、アーオ、あお』




アーオだとなんか猫の鳴き声みたいだな。




『何か用?』




『あおあおあおあおあお…ん?』





今、私のではない声が聞こえたような…





私はひっぱるようにして、手すりに掴まって空を見上げていた体勢を、もう少し反らして、背後の方へ目をやった。




あ。



なかぼりさ…





『あぁぁぁきゃぁぁぁっっっ!!』





驚いて、手から力が抜けたら、もっと驚く結果になりました。