詐欺師の恋

「これ、ミモザ。」




お兄さんは、私の前に置いた黄色い液体を指してそう言った。




「お酒あんまり強くないみたいだったから。」




勧められるままに口にしたカクテルは、林檎のような香りと柑橘系の香りが漂っている。




「美味しい…」





味はオレンジジュースのようだけれど、泡がはじける。




訊けば、シャンパンとオレンジジュースを合わせたカクテルだとか。




「隠し味に、オレンジリキュールもちょっとね。」



お兄さんはそれだけ言うと、やっぱり静かに笑ったまま、あとは私に構う事無く、ライブの成り行きを伺ったり、他の客の相手をしていた。



その距離感は心地よくて、私をリラックスさせたので、遠くに居るライブの中心人物を見つめながら、中堀さんとの出逢いを振り返る余裕さえあった。





―来年は、もっと中堀さんに近づきたい。




誰に願うわけでもなく、そっと呟く。




夜が、確実に更けていく。