詐欺師の恋

会場のボルテージはぐんぐん上がっていき、魅了されていた私だけれど、気持ち的には昨夜からジェットコースター。



途中で、バーカウンターに行って、喉を潤すことにした。



けれど、そちらに足を向けた瞬間、バーテンダーの人とばっちり目が合って、にこりと微笑みを向けられる。




「!」



な、なんだろう。



違う意味でドキドキしながら、立ち止まるのも変なのでそのまま歩を進めた。



木目にニスの艶があるカウンターの席に着けば、直ぐに目の前にグラスが置かれる。




「え?」




薄暗くてよく分からないけど、バーテンダーのお兄さんの髪は恐らく、黒い。





「零の大事な子でしょ?ケイから話は聞いてる。気分悪くなってない?大丈夫?」





つり目のお兄さんは、微笑を絶やすことなく、私に訊ねた。




「だいじょうぶです…ありがとうございます…」




なんとか答えながらも、心の中では、ケイのばかやろうと叫んでいた。



色々お節介すぎる。



『零の大事な子』



これだけで、気持ちが有頂天になっちゃう阿呆な女なの。


本人から言われたわけじゃないのに。