詐欺師の恋

客がわぁと歓声を上げた瞬間、今度は赤いレーザーライトが煌き、さっきと打って変わったアップテンポの曲が続く。




―これが、一体になるってこと?




今までちゃんとクラブの演奏というものを、しっかり聞いていなかった私は、全体の一体感みたいなものを感じて、ふわふわしてくる。



タイミングとか、そこに居る人のテンションとか。



そういうのをコントロールして、気持ち良く楽しませてあげる。




中堀さんの仕事の意味が、ほんの少しだけれど、理解できたような気がした。




DJは独奏に近い、独りよがりの仕事のような気がしてた。




全て自分で決めて、自分でやっていく。そういう感じの。




でも、違うんだ。



聴きに来てくれた人達に。



ここでの世界を、存分に味わわせてあげる。



外であった嫌な事も、辛い事も、ここでだけは、無くして上げる。



今だけは、忘れて良いよと言ってあげる。



それは、単なる言葉じゃなくても。




伝えることができるんだね。