詐欺師の恋

既に出来上がっている観客もいるのに、その暗闇に静けさが伝染する。




私もその中の一人で、固唾を飲んで、多分中堀さんが居るだろうと思われる方角を見つめた。





そして。





流れ出す、メロディー。





いつも、聞くような、私の知っているような、心臓がバクバクするような、そんな曲じゃなくて。




踊ろうってわくわくするような、ものでもなくて。




しとやかに。



流れていく、この音は、何故か胸を切なくする。





やがて射し込んだ光は、青くない。




金色の光。



観客も、それをただ静かに見つめている。






あぁ、中堀さんだ。



零になった、中堀さんだ。



髪が邪魔にならないように、キャップを被っていて、リネンの白いシャツを着ている。





一体、この人は、何度私を恋させるんだろう。




私は何度でもこの人に恋をする。




何度でも、鼓動は速度を増していく。




胸をぎゅっと掴まれたような感覚に陥る。




今持つ感情を、なんて言葉で表わせば良いのかわからないままひたすら見つめ続けていると、静かに緩やかに流れていた音は段々消えて行き―




そしてパン!という音と共に、花火が散った。