詐欺師の恋

受付や、バーカウンターは人でごった返していた。


中堀さんが居る時はいつも大人数だけど、この多さは半端じゃない。




なるほど、ケイやメリッサ以外にも、首からパスケースをぶら提げたスタッフたちが走り回っている。





「ここは立地の件で、再入場ができないことになってるから、間違っても外に出ないでね?もし外の空気が吸いたくなったら、屋上があるから、そこに行って。」




ケイが人ごみをスイスイと避けながら言った。




「あ、はい。」




人の熱気が凄い。




「ここ、出待ちも禁止だし、外は静かなもんだよ。」



「出待ち…?」



「そう。零のファンとか、今回チケット取れなかった人とかも、さっきまで外で待ってたから、ちょっと注意したりしてたんだ。裏口も回られてるかもなー」




やれやれ、とケイは困ったように溜め息を吐いて見せた。





「さ、もう始まる。ここらへんが、よく見えるから。」




バーカウンターから少し離れた場所でケイは立ち止まると、私を振り返る。




「ありがとうございます」



がやがやと五月蝿い周囲に飲み込まれないように、お辞儀すると、ケイは頷いてから、じゃーね、と手を振った。



暫くその姿を目で追っていると、途中でバーテンダーのお兄さんと二言三言交わし、再び会場から出て行く。






そして―。




薄明るかった会場が、真っ暗になった。