詐欺師の恋

重荷じゃない。


枷(かせ)じゃない。



愛情の籠もった目で、ずっと中堀さんのことを見てきた。



確信を持って、付けた、名前。





「そのままの、ありのままの、中堀さんを、表わしていたんだと思うんです。」




そこまで言うと、もう限界。



堰を切ったように、涙が零れた。



だってね。



中堀さんが思ってる以上に、お父さんは、中堀さんのことをよく見てた。



愛してた。




それは、通じても良いと思うの。



知らないと、駄目なことだと思うの。




本当はもっと早くが良かったんだけど。




お父さんは、中堀さんに、いつもそのままでいいよって言いたかったに違いないんだ。



変わる事なんてないよって。



ありのままの、君でいいよって。





中堀さんは、背を向けたまま。




ぼやけた視界に、それが映る。




やがて、涙を払うのに瞬きをゆっくりすると。




パタンと扉が閉まった音がして。




もう一度瞼を開いた時には、中堀さんの姿はもうそこにはなかった。