詐欺師の恋


「っとと…」


つんのめって転びそうになった私は、なんとかその場に踏みとどまった。



ついこの間来たばかりのスタッフルーム。



そこには、テーブルや、ソファ、テレビとか、カウンターとかお酒とか、並べてあって、今の所誰も居ない。



メリッサがさっき言っていたのは更にその奥の部屋のことだ。






―に、逃げたい。




正直に言うと、そんな気持ちだ。




私はチラリと時間を確認するが、確かライブは21時から、朝7時迄。



今は20時40分。



中堀さん、もうスタンバイしなくちゃ駄目な時間じゃん。




っていうことは、あと20分もないじゃん。




そんな短時間で、どうやって、仲直りしろと?!




しかも問題はそんな、軽いものじゃないのよ。



せめて事の発端が、『冷蔵庫に入ってた私のプリン食べたでしょ!?』とか、『私が居るのに、テレビばっかり見てたでしょ!?』とかいう類のものだったらまだしも。



―あー!どうしよう!!!???




私は声を出さないまま、その場で身悶える。