詐欺師の恋

ル・ルヴェ・デュ・ジュールの裏口は、当然ながら人気がなかった。



従業員用の駐車場が5台分あって、その中にひとつ、見覚えのある黒い車が停まっていた。




それを見ると、苦々しい気持ちになる。





「今日は21時からだから、少し時間あるわね。こないだ零がダウンしてた部屋わかる?」




運転席から出てきたメリッサは、腕時計で時間を確認しながら、片手でバタンと扉を閉めた。





「わかります。」





私は頷いて、メリッサが裏口から中に入るのを、半歩後ろから付いて行く。





「じゃ、そこだから」




メリッサは入って直ぐの部屋をぴしっと指差すと、自分は通り過ぎようとする。




「え、ちょ、え?どういうことですか?なんですか?」




慌てた私を見て、メリッサは漸く振り返って、小さく溜め息を吐いてみせた。





「何って、仲直りよ。その中に零居るから。本番前に機嫌取っといてくれないと、零ならすっぽかしかねないわ。」




「え!?」




「あんまり時間ないから。じゃ、よろしく!」




驚き戸惑う私を余所に、メリッサは部屋に通じるドアをがばっと開けて―




「うわぁきゃぁぁぁぁぁっ」





あろうことか、私の背中を押して、思い切り突き飛ばしたのだ。