詐欺師の恋

馬鹿だ。


なんて馬鹿なんだろう。


心の中で、自分を何度罵っても足りない。




「それは、その、あの…」


馬鹿だ。


何も、いえない。



言い訳を用意していなかった。





「…いじったの?あの箱。」





中堀さんは、私に背を向けたまま、視線は写真に向けたまま、冷たく訊ねる。答えなんてわかっているとでも言うように。




「いや、あの…上から落っこちてきた時に床に落ちて…」




嘘じゃなかった。



けれど、いじっていたのかと訊かれれば、いじっていたのだ。




それが、どんな理由にしたって。




ああでも、ちゃんと伝えたいのに。





「その、後ろに、、、名前の、、意味が・・・」





ドキドキし過ぎて、言葉がたどたどしくなる。




返事もなく、中堀さんは写真を手に取り、裏を見た。




「それを、、伝えられたらって…」




それさえ、その意味さえ、わかっていれば。



きっと、中堀さんは笑ってくれる筈。




半ば念じるように、中堀さんの表情を窺うと。





「は…」





掠れた声で、中堀さんは確かに笑った。


けれど。


私の願望通りになったのかと、一瞬喜んだことを直ぐに後悔した。