詐欺師の恋

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時刻は23時を過ぎている。


私はソファに座って、部屋の壁に掛かっている時計を見て、それを確認した。





あれから、家に戻っても、中堀さんは居なかった。


連絡も、メールが一通。



『少し、遅くなる。』



それだけ。



どこが。




私は腹立ち紛れに持っていたリモコンをぐぎぎっと握り締めた。


どこらへんが、少しなのよ!





「緊張してたのに…」




いっそのことテレビに投げつけてしまおうかと振り上げた手を、力なく下ろした。




ローテーブルの上には、一枚の写真。



どうやって、中堀さんに、お父さんのことを伝えようか、考えて考えて。



悩んで。



それでも、絶対に間違いないと確信して。



中堀さんの、名前の意味を伝えたい、好きになってもらいたいと思うから。






「早く帰ってこいよー…」





口から零れ落ちる文句も、自然とぶっきらぼうになる。




悪戦苦闘しながら作ったハンバーグも、ちょっと焦げている上に冷めてしまった。



熱い内なら、それなりに食べられたと思うのに。