詐欺師の恋


―少し、外の空気を吸いに行こうかな。




写真を光に透かすようにして手に持ちつつ、ふとそんな提案が頭を過ぎった。



中堀さんも居ないことだし。



それに、ここ、都会だし。



実は東京よりも憧れの場所だったりする。




それなのに、まだあんまり出かけていない。



「よし!」



思い立つと直ぐに行動したくなる私は、立ち上がって支度を始める。




20分後にはそれなりに整えて、ぐるぐるマフラーを巻いて、持ってきた小さいショルダーバッグを肩に引っ掛けた。



そして、ポケットにあの写真を入れる。




「ふふふ」




陰謀だったとしても、合鍵を見ては何度も気持ち悪い笑みが零れる。







ねぇ、中堀さん。



私、特別扱いされてるって、思ってもいいかな。



勘違いじゃないよね?



ちょっとは近づけてるよね。





あとちょっとの残りの距離は、もう少し頑張れば、きっと縮まるよね?




「う、寒いっ」




玄関のドアを開けた瞬間、ぴゅっと吹き付ける北風が、部屋の温度と違い過ぎて、私は思わず目を瞑ってしまった。




まるで、そんなことを考えずに目を覚ませとでも言っているかのように。


それまで考えていたお花畑の思考は吹っ飛ばされてしまった。