詐欺師の恋

確か、とても有名な歌だ。



ここに書いてあるということは、何か意味がある筈なんだけど。



「どんな、意味だったっけ…」



昔に習った記憶を手繰り寄せようとすると、眉間に皺が寄る。




うーんと、うーんと…。




全然思い出せないのに、階段の軋む音が聞こえた。





「!」



やばいっ。



中堀さんが起きたのだ。


考えるのに夢中になって、気付かなかった。



写真立ての中に写真を戻すこともできずに、かろうじてソファの下にさっと隠した所で、リビングのドアが開いた。




「・・・・・」




まだ、虚ろな目をした中堀さんが、無言で突っ立っている。




「…お、おは、おはようございます!ど、どうしました?」




崩れ落ちたダンボールはそのままだが、必死に平然を装う私。





「…喉、乾いた…」




「あ、そぉですよねっ!今持ってきます!」




勢いよく立ち上がる私をよそに、中堀さんは視線をちらりと床に落とす。


ドキリとした。




「…地震?」




ナイス!熱はまだある!




胸の内でガッツポーズして、私は笑顔を取り繕った。





「ね、ねぇ!そうみたいですねぇっ!とっ、突然落っこちてきちゃって…」




合わせながら、ペットボトルの清涼飲料水を冷蔵庫から出し、コップに注ぐ。