詐欺師の恋

中堀さんの、幼少の頃の様子を想像して、少し気持ちが温かくなる。



ただ、引っかかる。


この日記の様子だと、中堀さんは自分の名前を気に入っているように思える。


どうして、嫌いになってしまったんだろう。



それとも、最初から嫌いだったけど、このお父さんがとても鈍感で気付かなかった、とか?



とりあえず、その頁に持っていた紙切れを挟むと、パラパラと手帳を捲っていく。




言葉を学び、話す語彙が増えてきたことを喜ぶ様子などは書かれているが、名前が嫌いになったきっかけになるようなことは書かれていない。




首を傾げつつ、12月31日が終わったので、次の手帳に移る。



あ。


1月1日、最初から、変化があった。


今までずっと落ち着いていた文字が続いていたけれど。



この日は、書きながら、ぼんやりすることがあったのか、それとも何か物思いに耽っていたのか。



文字のひとつひとつに、万年筆のインクが溜まり、滲んでいた。