詐欺師の恋


それから退院の日まで内容は機械的なものに戻る。


けれど、ちょっとだけ違うのが。




頁の角に小さく、あと何日とカウントダウンされている。



その優しさすら、涙が込み上げてくるには十分過ぎて。




もう、会うことの叶わないこの人が、どれだけ、愛情深い人だったのかが窺えた。





一度、手帳を膝の上に置いて、両手で零れる涙を拭う。




心を落ち着けるようにして、ふぅと息を吐くと、再び手帳と向き合った。






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September10



あの子に、会った。


入院した頃よりもずっと顔色が良くなっていて、ほっとした。


茶色い綺麗な瞳をしていたけれど、私と目を合わせようとしなかった。


言葉が、わからないのか、それとも話したくないのか、話しかけても返事が返ってこない。


施設で暮らすことを訊ねても、ぼんやりとどこか遠くを見ているようだった。


まるで、感情を持っていないようだった。


きっと、麻痺してしまったのだろう。



今日母親の消息が判明したが、一緒に暮らしていた男は父親ではないらしい。そのどちらも、もうこの世に居ない。



今のあの子に、そのことを伝えても、耐えられるだろうか。



母親への愛情は、あの子の中に、きっとあるに違いないから。



今はまだ、このままで。


あの子の心を、癒してあげなければ。


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