詐欺師の恋


紙には年配のしっかりした男性の字で、様々な漢字が無造作に書き散らされていた。




そのどれも、綺麗な漢字ばかりが使われている。




そして、真ん中に『空生』と書いてあって、ぐるぐると丸してあった。






もしかして。



もしかしなくても、名前を付ける時に悩んだ記録だ。




私はその紙をまじまじと見つめた。




そして。




ダンボールに再び向かって、さっき仕舞ったばかりの二冊続きの手帳を取り出す。





―中堀さんが、施設に来たのはいつのことだったんだろう。


january1から始まっている手帳を一枚ずつ捲る。



一頁一頁は、一日の時間が小さい文字で印刷されている他は、まっさらなもの。そこに濃紺の文字で予定などが書き込まれている。



来客や、会議、出張など、機械的なスケジュールしか書かれていない。






―そうだ。



ぺらぺらと捲りながら、ピンときた。




7月1日。



中堀さんの誕生日。


もしかしたら、中堀さんが施設に連れて来られた日なのかもしれないと思った。