詐欺師の恋

「うるせー」



本当に五月蝿そうに耳を塞ぐ中堀さんだけれど、そんなの関係ない。




「うわぁうわぁ」




鍵っ子が初めて鍵をもらった時のような反応しかできないけど、素直に嬉しい。


ただただ、手の内にある固い感触の鍵を見つめた。





「いっ、いいんですかっ!?」




とりあえず念のため訊ねると、中堀さんが、




「いらない?なら返してもらっても…」



と言って、私の手の内から鍵を取ろうとする仕草をしたので思い切り避けてやった。




「要ります!」




ふふふ、とほくそ笑んでもう一度鍵を見つめる。




「じゃ、早速行って来ます!」



私は、今にもスキップしそうなテンションで玄関に向かうと、靴箱の上に置きっぱなしだったコートとマフラーをひったくるようにとって、意味も無く鍵を閉めて出掛けた。