詐欺師の恋

私はソファの背もたれに近寄ってしゃがみ込み、中堀さんの目線より下から中堀さんを見た。




「車も置いてきちゃったし、しょうがないじゃないですか。直ぐに帰ってくるから、待っててください。」




お願いするように言う私の顔を、中堀さんはじとーっと恨めしそうな顔をして見ている。



そんな顔したって無駄だもん。



外は寒い。



悪化すれば、また熱が上がってしまう。



その上病院も行かないって言うし、休みだって今日明日しかないのに。




「・・・わかった・・・」




諦めたように伏せられた瞼が、私の決心を揺るがせる。



中堀さんがすごい可哀想に思える…



だ、だめだめ。




ここは心を鬼にするのよ、花音!





私は首をふるふると振って、同情と母性本能を追いやった。






「じゃ、行ってきます」





決意が固い内に立ち上がると、ローテーブルの上にあったキーケースから、中堀さんがカチリとひとつ、鍵を外した。




「これ、スペアだから。持ってていーよ。」




「え、あ、はい。」




突然のご褒美に、私はえへら、と笑うけれど、意識が付いて行っていない。



えっと。



差し出された鍵を受け取りながら、考える。


これって、つまり―




「合鍵!?!?!?」



理解した途端、叫んでしまった。