詐欺師の恋

IHのコンロは静かだ。



そして、この家には音がない。



BGMもない。





気まずい。



せめて、犬の一匹や二匹飼っていてくれたら少しは気が紛れたんじゃないかな。





グツグツというにはまだ早い段階の鍋を念じるように見つめても、無駄だ。







「―ありがと」





そんなわけで、背後から聞こえてきた言葉は、決して大きくはなかったけれど、はっきりと私に届いた。





な、中堀さんが…



私に、御礼を…。




あまりに珍しいので、私もぐるっと振り返ってソファにいる中堀さんを見た。





手で、顔を隠して、俯いて。。。




よく、見えない。




私は小走りに駆け寄ると、中堀さんの顔をなんとか見てみようと試みた。





「・・・赤い・・・もしかして、中堀さん、、照れ…むぐっ」






上から下から覗き込むようにして、そう言うと、突然手が伸びてきて、口をふさがれる。





「むっむ~!!!」




「うるさいよ。」





片手でまだ顔を隠している中堀さんだけど、顔が少し赤い気がするのは、熱のせいじゃなさそうだ。