詐欺師の恋

諦めたかのように、ふぅっと中堀さんが溜め息を吐いたのが肩越しにわかる。



けれど、中堀さんは、私を放そうとはしなかった。




まだ熱のある中堀さんの身体は、熱い。




「…ここは―」




言いながら、中堀さんの身体が少し緊張で硬くなったのがわかった。






「………早く帰んなきゃいけなかった家なんだ。」





呟かれた声は、いつもと違って弱弱しい。







「―それって…?」






「俺を育ててくれようとした人が、俺と住むために用意した場所。」




背中に回された手に、再度力が籠もる。




「でも、一回も来たこと、なかったんだ。」






比較的新しい家。


でも、新品じゃない。


温かみがあって、中堀さんのイメージとは少し違う。




ああなんだ。



中堀さんは、やっぱり優しい。



お父さんの為に、ここに帰ってくることにしたんだ。




だけど、ひとりで帰るのは、辛かったんだ。



感じていた疑問が、するすると解けていく。