詐欺師の恋


玄関で、コートとマフラーを外していて良かった。



中堀さんの胸の音が、聴こえる。




それが落ち着いてくると、比例するように、ぎゅぅっと背中に回されていた中堀さんの腕からも力が抜ける。





苦しかった呼吸が楽になると、私は中堀さんの背中を優しくぽんぽんと叩いた。





「…この家にひとりで居たくないんですか?」




中堀さんは、答えない。





「―だから、私を呼んだんですか?」





確証はなかった。



でも、何故だかそんな気がしていた。




中堀さんが、私のことを、好きか、と考えたら、嫌いではないと思うという曖昧な答えしか出てこない。



じゃ、なんで傍に居ていいの?


どうして、呼んだの?


それはきっと。



一人が恐いから。



その事実に、薄々と気付いていた。