隼人「...」

鏡の中はどんなものなのかかなりかまえていたのだが、目の前には見覚えのある光景が広がっていた。

隼人「学校...じゃねぇか...」

確かに学校なのだが、少し違和感を覚えた。もし鏡の中というのが俺の勘違いなら、今鏡は俺の目の前にあるはずだ。だが、今鏡は俺の背後にある。

隼人「というか...いろいろ逆じゃね?」

踊り場から更に上に上る階段は普通俺の位置から見ると右側にある。だが、今の状況だと左側にある。

隼人「はは...ほんとに鏡の中ってことか...」

俺が少し戸惑っていると、階段を下りたところに小さい女の子がうずくまっているのに気付いた。髪は肩くらいまであり、メガネをかけていた。

女の子「ぐすっ...ぐすっ...」

俺は直感的にその女の子が助けを求めていた子だと思った。俺は女の子のところまで歩いていき、そばにしゃがんで目線を合わせた。

隼人「...どうしたんだ?」

俺は女の子が驚かないように、優しく話しかけた。

女の子「...美緒...死んじゃいそうなの...たすけて...」

美緒というその女の子は小さな声で言った。小さく震えているのを見ると、すごく怖がっているのがわかった。

隼人「...大丈夫だ!何があったのかはよくわかんねーけど、俺にできることならなんでもするからさ!だから、もう泣くなって!」

女の子「...ほんと?ほんとに何でもしてくれるの?」

隼人「ああ!」

女の子はしばらく黙っていたが少しして顔をあげた。まだ頬に涙のあとが残っている。

女の子「あのね...美緒...あれがないと死んじゃうの...」

隼人「あれ?あれってなんのことだ?」


女の子「...魂」


俺はしばらくその言葉の意味が理解できなかった。

隼人「あ...えっと...それってどういう...」

女の子「美緒、今魂が足りないの。このままだと消えちゃうの。だから...」


『お兄ちゃんの魂...ちょうだい?』