休み時間になると、穂那実のまわりにはたくさんの人だかり(ほとんどが女子)ができていた。まあ、転校生の宿命というやつだろう。
俺はその光景を自分の席でしばらく眺めていたが次の授業開始まであと五分という時間になると、次の授業の教室へ向かうために教科書などを持って立ち上がった。

火音「三谷くん」

突然後ろから名前を呼ばれて振り向くと、そこには教科書などを女子のように胸の前でぎゅっと大切そうに持っている穂那実がいた。

火音「あ...えっと、突然声かけちゃってごめんね」

隼人「気にしなくていいって!で、どうしたんだ?」

火音「その...俺、まだこの学校よくわからなくて...。もしよかったら放課後とかに三谷くんに学校を案内してもらいたいなって思ったんだけど...忙しいかな?」

隼人「んと...放課後は委員会があるけどすぐに終わるから、そのあとでよければ案内するぜ!ちょうど今日は部活もないしな!」

そう言うと、穂那実は嬉しそうにぱあっと顔を輝かせた。

火音「あ...ありがとう!」

隼人「じゃあ、今日の放課後にこの教室でな!」

火音「うん!」

穂那実は元気よく返事をするともう一度俺にありがとうと言い、教室を走って出て行った。俺もそろそろ行かないと授業に遅れてしまう。まるで女子と会話をしたかのような不思議な感覚を残したまま、俺も教室を出た。

そういえば、俺は名前を教えてないのになんであいつは俺の名前を知っていたんだ...?