息をきらし、ドアをバンっとならしながら教室へ駆け込み椅子に座る。その数秒後にホームルーム開始を告げるチャイムが学校全体に鳴り響いた。
俺の少し後に教室に入ってきたゴリラ先生は、幸い俺が遅刻ぎりぎりだったことに気づいていないようだった。

ゴリラ先生「ホームルーム始めるぞおー！！号令！！」

生徒「起立」

教室の外まで響くほどの大きな声をはりあげるゴリラ先生に、朝からよくそんな元気があるなーと感心しながら礼をし、着席する。

ゴリラ先生「今日はこのクラスに転校生がきた！入ってこい！！」

ゴリラ先生のその言葉を聞くとクラス全体がざわめきはじめた。転校生なんてめったにこないものだから俺もどんなやつがくるのか少しわくわくした。

ガラガラ...

そんなことを思っていると、教室の前のドアから転校生が入ってきた。

その転校生はオレンジ色の瞳に赤いメガネ、白い髪をしており前髪は赤いピンでとめられていた。普通、転校生が教室に入ってきたときは見た目やどんな性格なのかを考えるだろう。
だが、俺はそんなことを考える間もなくその転校生を見た瞬間に、さっきまでのわくわくした気持ちが嘘だったかのように驚き、固まってしまった。走って乱れていた息がしばらくとまってしまうほどに。

俺が固まっている間にゴリラ先生は転校生にクラスのみんなに向けて自己紹介をするように促した。転校生は黒板に綺麗な字で自分の名前を書くと、俺たちの方を向いて明るい声で話しはじめた。

転校生「はじめまして、穂那実 火音です。これからよろしくおねがいします。」

教室内でパラパラと拍手がおこる。
俺は丁寧にお辞儀をする穂那実という転校生からそっと目をそらして、自分の気持ちを落ち着け、そして押し殺した。