初恋だったと思う。
アイツが、私の……

「綾香ーー‼︎」
「はる‼︎おはよー♡」
私と綾香は幼稚園からの幼なじみだ。
一緒の高校を受験し、今日入学式を迎えた。
小学校も中学校も別だったものの、塾で再会した今、そんなのは関係ない。
「やっぱ、桜咲かないよねー。」
「うん。咲くのはテレビん中だけだし‼︎」
昇降口のドアに貼られてあるクラス表、私たちは駆けて行った。
「わー‼︎綾香と同じクラスだ‼︎やったねー」
「本当だ‼︎私はるしか友達いないからうれしー‼︎」
「あは…なにそれ‼︎私も嬉しい」
綾香は昔から、私の憧れだった。
可愛くて、優しくて、友達が多くて、なんでもできる。
羨ましくて、憧れ。
そして、変わらない親友だ。
「教室行こうよ、1年2組だね。」
「うん!」
教室は一回の隅にあり、私立ーて感じの綺麗な教室だった。
「ここかぁ。うわ、見てよはる。あれ担任かなー?」
綾香が指差した先には、中年のいかにも奥さんの尻に敷かれてまーすて感じの弱々しいおっさん。
「うわ、とか言っちゃんなよ笑優しそうでいーじゃんか。」
「だね‼︎なーんか忘れ物とかしてもさ、あ、はーいはーいみたいな‼︎」
「馬鹿にしてるでしょ、綾香」
「せいかーい‼︎」
笑いながら、教室へ踏み込んだ。






次の日

「おはよー綾香‼︎……あれ、えっとー…」
「おっはよぅ‼︎はる!こちらはのん‼︎音って書いてのんって読むんだよ?凄いよね‼︎」
綾香の横には、可愛くて小さな小悪魔ちゃん的な女の子。
「あー、のんちゃん。えーと、花沢音ちゃんだっけ」
「うん‼︎はるちゃん、よろしくね?のんでいいよ」
「……よろしく‼︎のん」
あーダメだ。
人見知りは嫌。
顔がゆでだこになる……
「実はのんと家が近くてね‼︎びっくりしちゃった。家でたらのんがいるんだもん!ねぇ?」
「うん‼︎」
あーあーあー緊張する。
緊張するーー‼︎
「はるー?早く行こうよ‼︎
「あ…うん‼︎ごめんごめん」
「ねぇ綾香、はるちゃん、あの人かっこいいと思わない?」
「え⁇」
「誰、あの人」
それは、坊主の軍団。
正直誰が誰だか見当がつかない坊主っぷり。
野球部に入る気だろう。
「そーかぁ⁇私、野球部は無理なんだよねー‼︎やっぱバスケ部じゃない⁇」
「え!なんでよー‼︎めっちゃかっこいいよ、ねぇはるちゃん⁇」
「へ⁇あーうん。私、野球部とか好きだよ。」
「でしょでしょ⁇」
確かに、かっこいいっちゃかっこいい。
でも、なんかクールそうで、怖そう。
もし付き合うとしたら、もっと優しい人がいいや。
そんな話をしているうちに、教室についた。
「わ‼︎同じクラスだっ‼︎」
本当。
あの野球部に入りたいイケメン君は、1番後ろの席で顔を伏せていた。
やっぱ怖そう。
「もーやだはるちゃんてば‼︎見つめちゃってー一目惚れ⁇」
「は……///違うよ‼︎」
うわ…目があったー……最悪。
……強い眼。
男子って感じ。
やっぱり怖いけど。
「あは‼︎照れてからぁ。はる、男慣れしてなさそう。ザ・純粋ガール」
「いや、それはないない‼︎ないことはないけど……え…わかんないー」
「てはるちゃん、席前後ろじゃん彼と‼︎うっらやますうぃ〜」
「え⁉︎…わー本当だ……」
最悪。
女子の恨み買わなきゃいいけど。
「はーい席に着くー。今日最初は、部活動についての話をします。」
でた、弱そうな先生。
席に着いただけで、妙な緊張と圧力を後ろから与えてくるイケメン君。
どーせこの人は野球部だろーなぁ。
髪型からバッチリだし。
部活希望調査表、そう書かれた紙が配布される。
イケメン君をチラリと窓越しに見ると、きったない字で
野球部
と濃くハッキリ書かれていた。
やーっぱり。
私はもちろん
吹奏楽部
と強く書いた。
ずっとずっと、私は吹奏楽部に憧れていた。
入りたかった。
でも、中学では吹奏楽部自体がなく入ることができなかったのだ。
だから親と殴り合いの喧嘩までしてまでやっと、この吹奏楽名門校へ入学させてもらった。
「はーい後ろから集めろー。」
イケメン君……あ、名前あるんだ。
あるか、そりゃ……
相楽時雨……あいらくときあめ⁇⁇
わっかんないな。
なんて書いてんの?
「なに人のプリントじろじろ見てんだよ」
「え、あ、すいませ…」
「早くプリント渡せよこのドブス」
……………………………え。
待って⁉︎予想と違うよ‼︎なにこの鬼畜男‼︎ドエス⁉︎
……てか、ムカつく‼︎なんなのこいつ‼︎
「早くしろよ」
「……はいはい、すいません。あいらく君。」
「はぁ⁇何言ってんだお前。ブスな顔におまけに馬鹿か。」
「な」
「さがらしぐれって読むんだよ。相楽時雨。」
うざーー!
性格悪っ‼︎
「早く行ったら?」
「うっざ。お前に言われたくねぇよ」
む、か、つ、く……ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく
ムカつく!!!!
相楽時雨……一瞬でもトキめいたあの時間を返して欲しい
「はい、じゃあ次は自己紹介ー前から順番にー」
あー苦手、無理無理、なんか2日目嫌なことばっかり。
「えーと…森井綾香です‼︎吹奏楽部に入る気でーす。元気だけが取り柄の15歳です!よろしくお願いしまーす‼︎」
おー綾香、一緒の部活じゃん。
ラッキー‼︎
「花沢音です。私も吹奏楽部に入ろうと思ってます……。みんなと仲良くなりたいです!よろしくお願いしまーす」
かわいーという声がチラリチラリと聞こえる。
やっぱモテるのかな、のん。
そんなこんなで後ろのイケメ…相楽君。
「相楽時雨っす。野球部入部希望でー得意なのは野球で趣味は野球で…まぁとにかく野球馬鹿っす。よろしくお願いしぁーす」
うーわ根っからの野球野郎だなコイツ…。
「えと、木村春希です。吹奏楽部に入部希望しました…得意なこととか特に無いんですけどーよろしくお願いします‼︎」



放課後

「音楽室ってどこー…この学校広すぎ!」
「あっちじゃない?あの右、右右。」
「え、左じゃない?」
綾香、のん、私で、校内を歩き回るけど、全く音楽室は見つかんない。
私立は広いなー…
「こっちじゃないの⁇」
誰⁇⁇
まるで天使のような女の子が、真っ直ぐ先を指差した。
「あ‼︎ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます…あ…れ、」
のんが、天使のような女の子を見つめた。
「あの、華鈴中学校でパーカッションしていた…梶原葉月さんですか?」
…誰⁇
「……あは‼︎びっくりした‼︎」
一瞬キョトンとした梶原葉月ちゃんは、すぐに顔をほころばせた。
「私のこと知ってくれてるんだ。じゃあ、パーカッションしてるの⁇」
のんの顔が一気に明るくなる。
「うん‼︎あ、あの、葉月ちゃん…も、吹奏楽部に入るんだよね⁇」
「そうだよ、もちろん‼︎」