心の奥に、ドキドキを抱えて。
頭の中に、もやもやを抱えて。
映像のように流れる景色をただ見つめて
重い足を引きずって歩く。
音のない世界を不安定に進む。
「和葉っ!」
突然の大声にハッとする。
「あっぶねーなー……。」
そう言いながら、私の腕を掴む。
階段から落ちそうになった私を支えたみたいで。
その手にさえ、温もりを感じる。
それに、愛しさも覚える。
「……ボーッとしすぎじゃない?」
そう言って、心配そうに見つめる瞳。
よく見ると茶色をしていて、きれいだ。
今まで気づかなかった些細な事が、
今まで気づかなかった小さな癖が、
今まで気づかなかった大きい手が、
今になってやっと気づく。
「……別に……見とれてただけ。」
「あっそー。」
目をそらしながら、口元が緩んでいるようにも見えた。
耳が赤くなっていて、なんでだろ。
ああ、一つ一つの事が気になってる。
知りたいなって思ってる。
なんだろう、このきもちが、
溢れ出しそうになってる。