連れて行かれるがままに
足が止まった場所、そこは…
暗い暗い、路地裏だった。
朝のはずなのに、暗くて、夜中みたいだ。
「おい………お前さぁ……」
大きな手が、私にのびてくる。
怖い……怖いよ……。
誰か………助けて………
「結城…玲央って知ってるか……?」
玲央君………?
「……し、知りません…」
玲央君の…………何なの……?
「さっき、結城といただろ!」
大声で叫んで、目が怒りに満ちている。
「………あの……何があったんですか…?」
恐怖で震える声で聞く。
「……うるせぇ!お前は結城の何だよ?!」
私の質問には答えない。
私が…………
………玲央君の…何かって……?
私は………玲央君の……………何……?
“婚約者”
そんなの、言えない。
怒り狂ってる人に、それは……。
“幼なじみ”
それしかないか……。
「……幼なじみです!」
私も大声で言ってみる。
「そうか………。」
ニヤリと笑う表情に、
なんだか、嫌な予感がしたんだ。
そう思っている時だった。
大きな拳が、私の頬に向かってくる。
痛い
という感情よりも
何か、違うものが浮かんでくる。
これ………何…?
そんな事を考えていると
お腹に蹴りが入る。
息が…………できない…
涙がとめどなく流れてくる。
地面には、赤い、朱い………
私は…………目を瞑った。

