特別なお客さん。〜あなたとの距離〜

「少々お待ち下さいませ。」

私の後ろには誰も並んでいない。

2人だけの時間、って気がしてしまって、余計に意識してしまう。

領収書を用意してくれてる。


あ、そうだ。

名前!

名前なんていうのかな??

名札、名札を見たら…

って今は私の方ではなく、レジの方を向いているから名札の字がよく見えない。

「お待たせ致しました。」

その瞬間に見えた名前。



ー大原



大原…さん。

「ありがとうございます。」
領収書を受け取る。

恥ずかしくて、初めは領収書の方を見ていた。
だけど、これは言わなくちゃ。



「ありがとうございます♪」

私は笑顔で目を見て言った。




いつも私がしているレジでのお客様への笑顔ではなく、

レジをしてくれた雑貨屋の店員さんに対しての笑顔ではなく、

”大原さん”に対しての笑顔で。