特別なお客さん。〜あなたとの距離〜

「聞きましたよ?大原から。付き合い始めたって。」

「!…はい…。そうなんです。」

「あいつ、ずっと何年も宮下さんのこと気になってて、好きだったし、よほど嬉しかったんだろうな。それでかな、バイトにも集中できず、宮下さんのこと考えてたのかも♪」

「いやいや…そんな…。それに、ずっと…って?」

「あ、気になります?」

他のお客さんがいないことを良いことに、私は気になったから玉川さんから聞いた。


大原くんは3年前から私のことを気になっていたらしい。

たまたまバイトの休憩でパン屋に来て、笑顔で丁寧な接客をしていた私のことが気になり始めたとのこと。

それからはちょっとでも覚えてもらえるように、会いたいから、ってパンを買いに通うようになった、っていうこと。

買いに行っても私がバイトの日ではなかったり、レジにいなかったりもして、いたと思っても隣のレジになったり。それに、私が大原くんのことを1人の"客"としか見てないと感じたらしく、もうダメかな、と思っていたときに私が覚えているような感じがして、そこからは今に至るってことも。

実際に私が大原くんのことを覚えたのはつい最近のことだけど、そんなにも前から私のことを…と思うと嬉しかった。

私も何でもっと前から気がつかなかったんだろう、って。


閉店の時間になり、玉川さんは帰って行った。