「それでね、旦那が浮気してるんじゃないかって心配って言ってたの」

優子は自分の心拍数が再びあがっていくのを感じた。

「……でもああいう人に限って意外と誠実で浮気とかってしないんじゃないですか」

「どうなんだろうねー。でも心配しちゃうのも分かるかも。あれだけかっこいい旦那さんだったらね」

「まあ、確かに…」

優子は蕎麦をすすりながら、ひたすら焦燥感に駆られた。

ああ、どうか早くこの場から逃れたい。

そう思う一心だった。

美穂の目が明らかに笑っていない。

この人は一体何を考えているのだろう。

うっすらアイラインの引かれた切れ長の目が優子を鋭く突いてくるような、そんな気がした。

……それともただの優子の思い込みなのか。