優子は那覇空港に降り立った。

両親と姉の紗耶、そして姪っ子の愛未が迎えてくれた。

優子の実家は空港から40分程車で走ったところにある。

「優子もすっかりナイチャー(本土の人)の顔になったな」

父の健二は車を走らせながら言う。

「もう6年も東京に住んでたらそうもなるさー」

「寂しいねえ」と母の明美。

実家に着くと、豪勢な夕飯の支度がしてあった。

泡盛のボトルや缶ビール等のお酒類も畳の上にずらりと並べられている。

いつも帰郷する度にこうやって”お帰りなさいの会”を親戚一同で開いてくれる。

「内地(本土)で頑張ってる優子に乾杯」

こうやって帰って来る場所があるというのは本当に心温かいものだ。

「優子はうちと違って勉強できて東京の良い大学と会社に入って、姉妹でもこんなに違うか?って最初は思ったさー」

沙耶は水で割った泡盛をぐいぐいと飲みながら、優子の肩に手を回す。

「沙耶ネーネー(沙耶お姉ちゃん)飲みすぎ。潰れても知らんよ」

優子は沙耶のグラスを取り上げ、テーブルの上に置いた。

全く、彼女の酒豪っぷりはさすが昔から変わっていない。

やがて叔父が三線を弾き始め、皆が一斉にカチャーシー(沖縄独自の踊り)を踊り始めた。

本当に楽しくて、この時ばかりは豊のことは忘れることができた。