「優子ちゃんこそすごい良い子だよ。周りによく気配りできるし、思いやりのある子だっていつも思ってたよ」

「そんなことないですよ。でも、そう言って頂いてありがとうございます」

「どういたしまして」

豊はふふと微笑み、優子の鼓動が一気に高鳴った。

ああ、やっぱりこの人が好きかも知れない。

いや、好きなんだ。

「次、なに飲む?」

豊の一言で優子はハッと我にかえった。

「あ、えっと、じゃあ赤ワインにしようかな…」

「俺も同じにしよっと。すいません、赤ワイン2つ下さい」

次の瞬間、優子は「あれ?」と不思議に思った。

豊の左手薬指に結婚指輪がはめられていない。

今日会社で見た時はいつものようにはめてあったのに、一体どうしてだろう。

あの、どうして指輪、と優子は言いかけて飲み込んだ。

わざわざ聞くことでもないだろうと思ったからだ。

BARにはそれから1時間半ほど滞在した。

ほろ酔いで体が火照っていたので、外に出ると冷たい夜風が何とも言えず心地良かった。

すたすたと先を歩く優子に「早い、早い」と豊は笑って言った。

「あ、すいません」

優子がそう言って立ち止まった瞬間、豊は後ろから優子の手をぎゅっと握った。

鼓動がドクン、ドクン、と一気に高鳴り、脈拍が一気に上がっていくのを優子は感じる。