放課後、帰る準備をしていると
にわかに廊下と教室内が騒がしくなった。
気になって見てみて、ぎょっとした。
「(なんで馨がこの棟に…!!!??)」
溢れかえる女子生徒、その中心には
双子の弟、馨。
私は1組で、馨は5組だから棟が違うから
滅多にこっちにくることはない。
それがどうして今日いきなり……。
そこまで考えてはっとした。
「(藍田君だ……!!)」
昼休みから放課後までの時間といっても
私は悪い意味で目立っているし
馨の情報網はものすごく広いから
ばれてても不思議じゃない。
「(見つからないうちに帰ろう…!!)」
そう思って、全速力で帰り支度を
済ませた。
「雪ぃぃぃぃいいいい!!!!」
……遅かった。
学校では話しかけるなと言ってあるから
校内で会うことは殆どないし私達が
姉弟だと知っている人間も数少ない。
どういう関係なのかも分からないから
瞬く間に周囲が更に騒がしくなった。
「ちょ、水原君!雪って誰!?」
そんな声が聞こえてくる。
教室内に残っていたうちの何人かが
驚いたような表情で私の方をみる。
「雪!」
どうしたものかと迷っているうちに
とうとう馨が教室に入ってきてしまった。
大多数の女の子が大袈裟なぐらいに
黄色い声をあげる。
「みて!馨君よ!」
「キャー!格好いい!!」
「でも雪ってだれ?」
本格的に不味い気がするけど
からだが動かない。
そうこうしている間に、馨が
私の目の前まで来ていた。
「雪、今日一緒に帰るぞ!」
「……」
「んな嫌そうな顔すんなよぉぉぉ」
だって、ねぇ…
後ろの女の子たちが怖くて怖くて。
「なに、あの女!」
「馨とどういう関係!?」
「馨に誘ってもらえるなんてずるいー!」
そんなテンプレ通りの言葉の数々。
かたやそんなことなんて眼中にないのか
懇願するような表情の馨。
どっちをとるかは決まってるけど
明日からが怖いな……。
「……コクン」
「よし!じゃあすぐ行こう!
駅前のクレープ食べたいんだ!」
心底嬉しそうに話す弟に苦笑しながら
一緒に今日を出る。
ただ…………
ほんと、明日からどうしよう。
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駅前の屋台でクレープを買って
手頃なベンチに座る。
「イチゴ美味しい?」
「コクン」
私のがイチゴで、馨がチョコのを買った。
イチゴも食べたいのかと思い、
差し出すと、案の定顔をほころばせた。
「うまー!やっぱたまにはいいよなー」
ほんと甘党だな……
お返しに馨のを一口貰う。
……うん、つぎはチョコにしよう
それからは馨が今日あったことを
たくさん話してくれた。
食べてる間は携帯はいじらないから
私は頷いたりとかしか出来ないけど
ある程度の意志疎通はできるから
そんなに支障はない。
「でさー、」
「コクコク」
気づけば手の中のクレープは
平らげられていて、二人してすこし
しょんぼりする。
「また来ような」
「ニコッ」
頷くかわりに笑うと、馨も嬉しそうに
笑って私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「で、雪さんや」
おぉう…
空気が変わった。
多分、こっちが本題。
「藍田に告られたんだって?」
すかさず携帯を出して
画面をタップする。
『伝わるの早いね』
「まぁ、雪目立ってるし……
で、どうだったん?」
『どうって…断ったよ。
クラスは一緒だけど、全然しらないし』
「ふぅん、そっか」
『まずは友達からってことで』
「へぇ……って、はぁ!!!??」
え、なんでそんな驚く??
「友達からってお前…向こうはお前のこと
が好きな男なんだぞ、おーとーこ!!!」
まぁ、藍田君が男の子なのは
見ればわかるよ。
「ったく、何かあったらどうすんだよ…」
『何もないと思うけど』
「それがわかんねーのが男なの!」
『藍田君、そんな人なのかな』
「かも知れねーだろ!……まぁ、雪に
友達が増えるのは良いことだと思うけどさ
気を付けろよ?何かあったらすぐ言え!」
『わかった』
ほんと、心配性だ。
シスコンもほどほどにしてほしいけど
そんな弟がなんだかんだ言って可愛い。
いつの間にかあしたの心配は忘れて
二人でベンチで話し込んでいた。

