「おめでとう、彩芽。今日から小学生ね。何だか時がすぎるのが早く感じるわ」


母は、フフッと笑うと私の頭を撫でて言った。


「彩芽ね、ひらがな全部かけるんだよ!」


私は無邪気に右手を上げ、言う。


「そうか。じゃあ、もうお手紙も書けるな?」


父も、そっと私の頭を撫でる。


「かけるよ!彩芽だもん!」


私は少しムキになっていった。


「それにしても、創摩くんのお母さん、いないわね。一緒に写真撮ろうっていったんだけれど・・・」


母は、キョロキョロとあたりを見回しながら言った。


「そうだな、まあ気長に待ってれば来るだろう」


父はのんびりと携帯をいじっている。


「そうね。・・・って、アレじゃないかしら」


母は、父の肩を軽く叩き、人ごみを指差す。


「ん?おお、アレだな。さて、挨拶しにいくか」


父はあわてて携帯をポケットに突っ込み、人ごみを目指して走っていった。


「彩芽もいく!」


おいていかれるのが嫌で、私もあわててついていく。


「ごめんなさい。遅れちゃって・・・。車止めるところがなくってね」


愛嬌のある顔で、創摩の母は、にこっと笑いながら言った。


「ああ、やっぱり?私たちもなの」


しばらく世間話をしていると、創摩がぴょこんと顔を出して言った。


「おはよう!彩芽ちゃん!」