「由里、悪ぃ。別れてくれ。」

23の春。

5年間付き合ってきた彼氏に別れを告げられた。

「どうして?!好きだって…結婚しようって言ってくれたじゃない!ほらっ…婚約指輪だって…」

1ヶ月ほど前に彼から貰った婚約指輪を見せる。

好きって。

結婚しようって。

言ってくれた。

思い出してよ…!

「…ごめん。」

「ぇ…?」

な、んで?

なんでなの?

キスだって沢山した。

ファーストキスだってあげた。

欲しいもの買ってあげたし。

「本当に愛してる女がいるんだ。」

「本当に…愛してる…女?」

「あぁ。」

「なにそれ?なんで?私のことは本当に愛していなかったの?私は遊びだったの?」

うすうす感づいてた。

もう1人女がいるんじゃないかって。

たまに女物の香水の匂いがするし。

デートの時に女の人から電話がかかってくるし。

だけど、どうせ愛人だろうって…

あなたは愛人なのよ。

遊ばれてかわいそうね。

早く気づきなよ。

って、心の中でそう思っていた。

見下していた。

だけど、本当は…

愛人は私のほう─。

「遊び…だったんだ。私。」

目の前が暗くなる。

信じてたのに。

「……ごめん。」

「~~~っ!馬鹿っ!大っきらい!!」

持っていたバッグで彼を殴り、走ってその場を去る。

もしかしたら追いかけてくれるかもしれない。

追いかけてきて

『由里、ごめん。やっぱり好きだ。』

って。

…だけど、それはやっぱり空想でしかなくて。

追いかけてくれるはずもなく。

人ごみの中で1人泣いた。

もう、恋なんてしない。

こんなにも、つらいなら。

恋なんてしないほうがいい。