「翔平!どうしたんだよ。」
陸が追いかけてきた。
彼女はまた小さくお辞儀をし、去ろうとする。
「待って…」
あれ、なんで引き止めてるんだ俺。
特に用も無いのに。
彼女はきょとんとしている。
「お、俺、倉木翔平!」
自分のことを指差しながらそう言った。
彼女は少し笑って、メモを俺に渡してきた。
俺は普段より大分綺麗な字で、「倉木翔平」と書いた。
その下に、「君の名前は?」と書いた。
もちろん、知っている。さっき陸から聞いたばかりだ。
彼女は俺からメモを受けとると、
「中村潤」と、書きメモ用紙を破って俺に渡してくれた。
潤、って書くのか。彼女にぴったりな名前だと思った。
「潤 っ て よ ん で も い い ?」
ゆっくり、俺はそう言った。
すると彼女は、昨日の笑顔とは比べ物にならないくらい、可愛い、花のような笑顔で大きく頷いた。
