ココロトタマシイ



「あ!南くんっ」


私は廊下で偶然見かけた南くんの名を呼ぶ。


それに気が付いたのか、彼は振り返りながら足を止めた。

小走りに近付くと、彼は体を完全にこちらに向けてくれる。


「僕に何か用?」


「あ、その…傷大丈夫かなって」


ちらりと、この間包帯が巻いてあったであろうところを見やる。


すると、彼は呆れたようにため息をついた。


「なに、あんなのまだ気にしてるわけ?」


「そ、そりゃ気にするよ!

……私のせいで、怪我させちゃったわけだし…」


この間の包帯姿を思い出すと、ツキン、と胸が痛んだ。


私の沈んだ顔を見て、彼は再度ため息をつく。


「……別に、あんたのせいじゃない。
僕の力不足だ」


「でも…っ」


「いいか、言っておくけど、あんたの魂は僕がもらう。
他の奴に捕られるわけにはいかないんだ。

この間だって、別にあんたを助けたつもりはない。
勘違いしないでくれ」


彼は早口にそう言うと、疲れたように前髪をかき上げた。


「…とにかく、あんたが気にするようなことじゃない。

それから、学校では必要なとき以外話しかけないでくれる」


「………うん」


どこまでも突き放したような言い方の彼に。

私は小さく頷くことしかできなかった。

そんなに嫌われてるのかと思うと少し悲しくなる。

それでも彼は表情を変えないまま、「それじゃ」と一言残して去ってしまった。


遠ざかっていく背中を見つめると、なぜだか心がざわついた。

彼に悪いことが起きてしまう。

そんな根拠のない予感が頭をよぎった。