「……ちなみに、おいくらですか…?」


財布と彼の顔を交互に見ながら尋ねれば。

彼は無言で指を5本立てた。



―――5万……。


力を手に入れるためには、それぐらい必要ってことか…。

でも生憎持ち合わせていないし。

惜しい気もするが、仕方ない。


「これはお返しします」


僕はついさっき受け取った瓶を、彼に差し出す。


すると、彼は不思議そうに首を傾げた。


「どうして?力が欲しいんでしょ?」


「生憎、手持ちがないんですよ」


「…見た限りでは、5千円くらいあるみたいだけど?」


「…………は?」



5千円?


今までこいつと取り引きをしてきて、1万以下のものはなかった。


――絶対何かあるに違いない。


「……あぁ、俺にしては安いから疑ってるんだね?

大丈夫、効果は絶対だから。
この俺が保証するよ」


「…………」


確かに、こいつは商売に関して嘘をついたことはない。


だからこそ。


何か裏があるんじゃないかと思ってしまう。


「別に、無理して買う必要はないよ?
どうせあと3年くらいで終わるんだから。

終わるまでの期間が早くなるか、予定通りか…ただそれだけだからね」


彼は瓶を手で弄びながら、淡々と語る。


終わる。


それは由紀が助かることを意味する。


できることなら、早く終わらせたい。


由紀を、助けたい……。


僕は強く唇を噛み締めると、無言で5千円を差し出した。


その時の彼の笑みに嫌な予感を感じながらも。


それに目を背けて、瓶を受け取った。