それに、この間病院であいつが言った言葉。


『お前の寿命は、あと1年と19時間12分』


もう今となっては、1年をきってるんだ。

3年もかけていられない。


…もしかしたら、こいつは知っているんじゃないか?

僕の寿命が、あと1年もないってことを……。


もし、分かっている上で、言っているとしたら………。



――でも。

それでも僕は、由紀を目覚めさせたい。

助けたいんだ…。


たとえ、どんな危険が待っていたとしても。


「――――どうしたら…力を手に入れることができるんですか?」


僕の質問に彼はニヤリと嫌な笑みを浮かべると、上着のポケットをごそごそと漁り始めた。


「これを飲めばいいんだよ」


そう言って取り出したのは、風邪薬とかによくあるであろう。

ごく普通のカプセル。


「飲むだけ…ですか」


こんなものを飲んだくらいで力が手に入るなら、苦労しない。


なんて思いながら、訝しげに彼を見つめれば。


「ホント、疑り深いんだねぇ、君は」


やれやれといった風に首を振りながら、彼は軽く肩をすくめる。

それから、カプセルがぎっしり詰まった瓶を僕に手渡した。


「ま、気になるなら試してみなよ。
飲んだら飲んだ分だけの力が手に入るから。

あ、でもタダじゃないよ」


「……分かってますよ」


あんたからタダで貰えるなんて思ってないし。

2、3万ってところか…。

そんな文句と予測をたてながら財布を取り出して中身を確認する。

しかし、そこには千円札が数枚しか入っていなかった。


「…………」


駄目もとで数えてみても、7枚しか入っていない。

2、3万どころか1万にも満たなかった。