やっぱり見えるのは、テレビのようにザラザラとした灰色。
どうしてなんだろう。
ふと頭に浮かぶのは、前に見た、あの、今にも泣き出しそうな彼の表情。
すごく辛そうだったけど、大丈夫なのかな…。
集中をといて目を開けると、南くんがじっと私を見つめていた。
「え…あの、……なに?」
「いや…あんまり静かだったから。
なに、寝てたわけ?」
「ち、違うよ!ちょっと考え事してて…」
それで…と口ごもる私に、彼は呆れたように微笑んだ。
「…変なやつ」
「なっ…!」
「あんたさ……」
彼の言葉に言い返そうと口を開いたとき、それよりも早く彼は言葉を紡いだ。
その顔は真剣で、思わず口をつぐむ。
私も真剣に彼の瞳を見つめ返すと、彼は哀しそうな表情を浮かべて、視線を窓の外に戻した。
「あんたはさ…その能力(チカラ)いつから持ってる?」
「えっと………確か、小学3年生のとき…かな」
「そうか…」
視線は依然として窓に向けられたまま、声はどこか寂しそうで。
「…南くんは?」
つい、そう尋ねてしまった。
そのとき、南くんの顔が一瞬辛そうに歪んだ。
やば…聞いちゃいけなかったかな。
「あっ!ごめん!!言いたくなかったらいいの!」
慌てて話を変えようと話題を考える。
………なのに何にも浮かばない…!
頬に冷や汗を流しながら、思考をめぐらせていると。
「―――僕は、12歳のとき」
「え……」
「ある人にもらったんだ…」
「…そう、なんだ」
なんて返せばいいか分からず、戸惑う私を知ってか知らずか。
彼は、切なそうに窓を見つめ続けた。

