「さっきよりは怖くない、かも」


「え…?」


いきなりの応えに間抜けな返事をしてしまった。


「今は、はっきり言って怖くない」


「なっ……!」


「南くん……。
…本気で私を殺そうと思ってる?」


「っ……!!
あ、当たり前だろ!!!」


どうして、当たり前だとすぐに言えなかったんだろう。

一体僕は、なにを躊躇っている…?





「……こせ………魂………」


少し考えている間に、とても微かなだけど、確かに声が聞こえて。

驚いて顔を上げると、向こうから誰かが歩いてくる気配がする。

……さっきと同じ気配。


「どうしたの?」


そんなの全く気付かずに、僕の下できょとんとしている彼女に感心しつつ呆れつつ。

小さくため息をついて、上から退く。

そして迫り来る気配から彼女を背に庇うように立つ。


「お前、僕の後ろから離れるなよ…」


「へ?」


「返事」


「は、はい!」


ジリジリと迫ってくるのは男子生徒のようだ。

またもやしっかりとした足取りで近づいてくる。


でもさっきと違うのは、明らかに人数が増えていること。

男子生徒の後ろにまた男子生徒と女子生徒が二人ずつ。

別の方からもぞろぞろと集まってくる。


僕の後ろにいる彼女が、微かに息を詰まらせたのが分かった。


「…僕の後ろにいれば平気だよ」


「っ……!
………うんっ!!」


絶対に今の彼女は満面の笑みだろう。

声の明るさから安易に予想できる。


単純なやつ……。


思わず自分も笑みを浮かべていたことに驚きつつ。

ようやく僕の前に立った男子生徒に向かって挑戦的な笑みを浮かべる。


「悪いけど、僕とこいつの魂は渡さない」


「寄越せ……奪ってやる……お前の魂、奪ってやるぅぅぅ!!」


「……その度胸だけは認めてやるよ」


「言っておくけど。
僕、強いよ?」


鎌を取りだしながらそう宣戦布告をして、目の前のやつを凪ぎ払った。