すっかり目を吊り上げながら。

ものすごい勢いで襲いかかってくる彼女をかわすと。

どこから取り出したのか、ナイフが飛んできた。


それも難なく避けて、僕も鎌を取り出す。


「そっちだけ刃物使うなんて、卑怯なんじゃない?」


「寄越せぇ…魂……寄越せぇぇぇ」


「……聞く耳持たずってことか……」


ため息をつきながら次々に飛んでくるナイフを避ける。

その間に鎌の柄で魔法陣を描いて。

すでに先ほどの綺麗な姿をもろともしない彼女をその真ん中に誘導する。


「さて、と」


「闇に囚われし憐れな彼の者を救い
再び現世に生を与えよ」


「うっ……うぅ、くっ」


「そして生を受けたあかつきには
我が契約の元にひれ伏すがいい」


「う、うあぁぁああっ」


頭が痛くなるような悲鳴をあげながら、彼女は光となって消えた。


「っ……はぁ……はぁ………」


ずいぶん久しぶりにやったけど、相変わらずしんどい。

それに、気持ちのいいものじゃない。


どうせ、向こうの世界で生まれ変わろうが結局は僕に魂を奪われる。

あの時の呪いによって付けられた紋章があるかぎり。

それは避けることの出来ない運命。


「…はぁ……っ…そこに、いるんだろう?
…出てきなよ」


「っ……!」


ガサッと葉の擦れる音がしたと思ったら。

木から飛び降りてきたのは、予想通り。

まさしく僕が探しにきた彼女だった。


「やっぱり…バレてた?」


「……当然」


勝ち誇ったように微笑んで見せれば。

困ったように笑いながら彼女が近付いてくる。


どうして、こうも簡単に近付いてこれるのか不思議だけど……。

彼女は先ほどと変わって眉を下げると、心配そうに僕の顔を覗き込んだ。


「大丈夫?顔色悪いよ。それにすごい汗……」


「っ……」


しかもそっと僕に触れようとする。

何なんだよ一体……。